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大阪地方裁判所 昭和26年(ワ)415号 判決 1963年5月30日

主文

破産者株式会社美人ぬか本舗と被告両名間に別紙第一目録記載の土地および同第二目録記載の宅地につき昭和二五年六月三〇日なされた金額三〇万円の債権担保による売買予約並に同年九月五日なされた売買契約はいずれもこれを否認する。

原告に対し、被告前川良雄は前項の建物につき、被告前川久太郎は前項の土地につき、原告のため、各自その所有権移転登記手続をせよ。

被告前川久太郎は原告に対し右土地につき昭和二五年六月三〇日大阪法務局登記受付第六六三六号をもつてした、原因売買予約にもとづく所有権移転請求権保全仮登記の抹消登記手続をせよ。

訴訟費用は被告両名の負担とする。

事実

原告は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、

一、株式会社美人ぬか本舗は昭和二五年三月株式会社山口玄から破産宣告の申立をうけ右申立を受理した大阪地方裁判所は同年一二月四日右株式会社美人ぬか本舗を破産者とする旨の宣告をなし、同日原告を右破産会社の破産管財人に選任した。

二、ところが、右破産会社は右破産宣告を予知しながら、昭和二五年六月三〇日被告両名から別紙目録記載の土地および建物を担保として金三〇万円を借受け、右不動産につき同日付をもつて売買予約をなし、右予約の確証として被告前川久太郎のため右土地につき、同日付大阪法務局登記受付第六六三六号をもつて、売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記を経由し、次いで同年九月五日付同法務局登記受付第九六七六号をもつて前記土地について、被告久太郎のため、右建物について、被告良雄のため同法務局同日登記受付第九六七五号をもつて、いずれも売買を原因とする所有権移転登記を経由し、被告両名はその後間もなく右土地建物を一括して訴外合名会社斉藤漆店に譲渡し、昭和二六年二月一三日、右法務局登記受付第一七五九号および第一七六〇号をもつて、右訴外会社のため所有権移転登記を完了させた。

三、しかしながら、右所有権移転登記は大阪地方裁判所昭和二六年(ヨ)第一六三号事件で本件土地建物に対し譲渡処分禁止の仮処分決定が発せられて間もなき時になされたもので、原告に対抗しえない処分行為であるのみならず、破産会社の被告両名に負担する前記債務は昭和二六年二月一〇日弁済によつて消滅し、本来担保物件たる本件土地、建物は破産会社に復帰し、破産財団を構成すべきものであり、したがつて破産会社と被告両名との間で結ばれた本件土地、建物についての前掲売買予約および売買契約自体その効力を有しないものであるから、原告は以上の契約を否認し、かつ各被告に対し前記各登記の抹消登記手続を求めるため本訴に及んだと述べ、被告等の抗弁事実を否認した。

被告等訴訟代理人は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、

一、原告主張事実のうち一、は認めるが、その他は否認する。

二、原告主張の本件土地又は建物に関しなされた売買予約とその本契約並に本件土地の所有権移転請求権保全の仮登記は被告久太郎の父であり被告良雄の妻の父である前川旨吉が勝手にしたもので被告両名はこれらの行為には何等関与していない。被告前川良雄は原告主張の頃は布施市八戸の里小学校の教職についており、被告前川久太郎は東京大学の学生として在学していたのである。

三、破産会社である株式会社美人ぬか本舗は訴外別所友吉において実権を掌握して経営に従事していたもので、被告両名の父前川旨吉は右友吉の申入により会社運営資金として金三〇万円を貸与し、その担保として本件土地建物につき売買予約並に売買契約をなし、右土地につき被告久太郎のため主張のごとき売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由させたものである。

四、ところが右友吉は右貸金の弁済期日である昭和二五年八月末日を経過するも、これを返済しないので、被告両名の父前川旨吉は右友吉の了解をえて、被告両名の名義を使用し、担保物件たる本件土地建物につき所有権取得の登記を経由したものであり、その当時被告両名は勿論右旨吉においても破産者株式会社美人ぬか本舗が支払停止や、支払不能の状態にあつたことは全く知らず、したがつて前川旨吉および被告両名は前記行為により破産者に対する他の債権者を害することを知らなかつたし、またその意思も有しなかつた。

五、その後本件土地建物の前所有者別所友吉から右旨吉に対し該不動産を一括売却し、その代金によつて借受元利金を返済したいとの申入があつたので、債権者前川旨吉はこれを了承し、本件土地、建物を訴外有限会社斉藤漆店に転売し、その所有権移転登記を了したものである。

六、本件土地はもともと別所友吉個人の所有であり、破産株式会社美人ぬか本舗の所有ではないから、この点からいつても原告の本訴請求は失当である。

七、仮に破産会社の所有であるとしても、本件土地建物につき同会社の所有としての登記を欠缺しているから、原告は正当に所有権を取得し、その登記を経由した被告両名に対し否認権を行使し各登記の抹消を求めることは許されないと述べた。

証拠(省略)

別紙

第一目録

大阪市東成区片江町二丁目二三番地の一、地上

家屋番号同町第三三六番

一、木造瓦葺平家建事務所 一棟

建坪  一二坪

附属建物

一、木造瓦葺平家建工場  一棟

建坪  一〇坪

一、木造瓦葺平家建倉庫  一棟

建坪  一一坪二合五勺

一、木造瓦葺平家建工場  一棟

建坪  一八坪

一、木造瓦葺二階建車庫  一棟

建坪  九坪七合五勺

二階坪 七坪七合五勺

第二目録

大阪市東成区片江町二丁目二三番地の一

一、宅地 一七九坪九合一勺

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